::
地域通貨にはいろいろなシステムがありますが、1番やりやすいのは交換リング型です。原理はバーター、物々交換です。物々交換を2人でやると難しいから大人数でやります。そうするとできてしまいます。物々交換って何だよ、そんな原始的なことをやるのかという人がいますが、そうではありません。最も進んでいるんです。それは昔もありました。1番よく知られているのは神殿交換です。2人で物々交換をするのは話が合わないし、なかなか難しいです。そこで村の人は自分のところで余ったものをお供えとして神様がいる神殿に持っていきます。お供えといっても神様が食べるわけではないので、そこに置いておきます。別の人が余ったものを持っていきます。神殿には、いろいろなものが置いてあります。そこで自分が持っていったものとちょうど同じぐらいの必要なものをもらってくるわけです。ずるい人がいて取っていきませんか。絶対そういうことはありません。神様が見ているから、ずるをやると罰が当たります。非常に公正な交換が出来ます。みんなが自分の余っているものを神様がいる神殿に持っていき、必要なものをもらうという仕組みです。交換できているんです。
その仕組みをヴィア銀行は電子取引で最も進んだ形でやっています。70年近い歴史があるものと同じように、我々がすぐしたいといっても出来るものではありません。その第1歩として交換リングがあります。同じ原理です。ただ神様はいません。こういう通帳です。お互いにその時に確認し合うので、ずるを出来ません。相手の通帳に自分がサインをします。相手は自分の通帳にサインをします。大人数で貸し借りの処理をします。理屈はそれだけなんです。これを発展させていけば、ヴィア銀行のようになります。今はこういうはがきでやっていますから、このはがきだけが頼りです。これをなくしたらおしまいです。運営をしている本部に口座があるわけではありませんが、大きくなっていけば、電子処理に移行するのは非常に簡単です。今はほんの始まりとして、こういう仕組みでやっています。かなり大きくなってきたらヴィア銀行のような仕組みにしていけばいいだろうという考えです。
これは千葉県ですからピーナッツという名前の取引単位をつけていますが、千葉県全県だけが範囲です。それ以外は使えません。もちろん私は千葉県民ではありませんが、個人の場合は千葉県以外の人でも参加できます。事業者、商店などは千葉県に事業拠点があれば入れるということです。それで千葉県の中で循環します。千葉県以外の人も入れるというのは、千葉県の方に富が集まってくるわけですから、入るをはかるです。もちろん千葉県の中にも全国規模のいろいろな商店があります。そういうところは入りません。ゆりの木商店会という商店街でピーナッツをやっています。もちろん商店街の中にはコンビニなどもありますが、コンビニは全国規模の資本ですから入ってきません。彼らがピーをもらってもしょうがないですから。しかし考え方を変えて参加するというのなら、参加できます。
その他の事例
アメリカでもそうです。例えばニューヨークで行われている地域通貨があります。その地域通貨で保険料の一部を払ってもいいという損害保険会社があります。保険会社は地域通貨をもらうと、全部破って捨ててしまいます。それでもいいんです。保険会社から見ると、地域通貨をやっているような地域は健全です。犯罪の発生率が低いんです。つまり地域通貨があるというだけで保険会社から見て、もう既に利益をもらっているということです。そこの住民が保険会社と契約をした場合、保険会社から見れば地域通貨で支払われた分を割引しているだけです。事故の発生率が低いし、大幅に割り引いても損はないんです。
あと、ドイツの例です。世界じゅうで動いている鉄道のジョイント部分で、どうしてもこの会社でしか作れないという製品を作っている中小企業がドイツにあるそうです。その会社のある町には地域通貨があります。その会社は地域通貨を積極的に受け入れています。売る物は余りありませんが、地域とちょっとした取引がある時には地域通貨を受け入れて、それを従業員にあげるんです。もらった従業員は、勤務時間中にこの地域の青少年の指導をしたり相談相手になったりします。勤務時間中にですよ。もちろん給料は出ます。それ以外に地域通貨をあげます。何故そんなことをしているのでしょうか。その会社のお客様は全世界ですが、生産はこの地域でずっと続けていくつもりだからです。地域の青少年が100人育ち、その中で自分の会社で働いてくれるのは1人だけかもしれない、しかしそのためにも積極的な負担をしよう、自分たちがこの地域社会の重要な構成員であるということをみんなに分かってもらおうという意欲があるからです。そういう地域通貨があると、企業から見ても、大きなメリットがあるんですね。
もちろん行政から見てもメリットがあります。それは何でしょうか。福祉、介護保険関係でいえばはっきりします。介護保険について、何から何まで全て国がやれと批判をする人はいました。けれどもその費用は税金で賄うので国民が負担することになります。国民の負担が増えるわけです。生活は地続きですから、行政が介護保険をやっても、カバー出来ない部分は誰かがやらなければなりません。もし地域通貨の仕組みでカバー出来れば、行政コストの削減につながります。行政コストが削減されるということは行政にとってプラスであると同時に住民にとってプラスです。つまり自分たちが積極的に何かをやれば自分たちのプラスになるということです。そういう意味で行政が積極的に主導してやるようなシステムもあります。
もちろん行政に頼らずに自分たちのイニシアチブでやるというところも多いです。いずれにしても今までのお金の仕組みだけだと解決できなかったレベルのことが地域通貨の仕組みを作ると、ごく自然に解決できます。人のやる気も出てきます。これからの時代は、社会の変化が激しくなっていくし経済状況にも希望が持てません。新しい何かを創造しなければ日本の社会が再び活性化していくことはないという認識は、中央のお役人も持っています。通産省のお役人は多参画型社会を作ろうと言っています。いろいろな人のイニシアチブ、積極性が出てこなければならないんです。お役人が上からこうしなさいといっても下々が動くわけではありません。これからはいろいろな知恵がもう1度表に出てきて交流し、新しい価値観が創造されていく中で社会が発展していくでしょう。それなら多くの人が自ら参加していく気になるような仕組みが必要です。
円の仕組みでは損得がかかわるので、つながりは出来ません。そんなことをやっても一銭にもならない、だからやらないという発想になってしまいます。ところが地域通貨の仕組みでは人の善意がつながります。地域通貨に参加する時に自分が誰で何が出来ますということを登録し、みんなに知ってもらいます。それを見た人が連絡してきて取引が成り立ちます。あるいは1つの交流会のようなものをやって、そこで取引をします。今までの円の世界では表に出てこなかった能力が世の中にいっぱい埋もれています。例えば主婦がちょっと時間が余ってきたしどこかでパートをしたい、けれどもパートをするなら1日何時間、何時から何時までといろいろ制約がある、やっぱり私には無理だとなります。ところが地域通貨の場合、自分の都合のいい時に1時間だけならおじいちゃんの世話をしてあげられるとか、おじいちゃんを病院に連れていくぐらいの付き添いならやってあげられるとか、そういう能力まで出てきます。それが値打ちになります。評価されるんです。あるいは家族全員で旅行に行きたい、でもうちの可愛いワンちゃんを連れていくわけにいかないから旅行に行っている3日間だけ誰か世話をしてくれないかという時、私はたまたま空いているから世話をしてもいいという人が出てきます。そういう取引が出来ます。今まで埋もれていたいろいろなものが出てきます。人間の優しいかかわりが出来るんです。
円の世界だけなら、ギスギスしてしまうこともあります。どこの家庭でもそうだと思いますが、例えば人に何かをもらう時、誰それさんから何月何日にどこそこのお土産でお菓子をもらった、包みを見ると2,000と書いてある、これは2,000円かしらなどとノートに付けておきます。今度はうちもそれを返さなくちゃいけないのであなたどこかに行きましょうよとなるわけです。これは非常に精神的な負担です。香典帳もそうです。うちのおばあちゃんが死んだ時にはどこそこから幾らなどと付けています。どこかで不幸があった時に香典帳を見て、うちはあの時はもらっていないというように。いろいろあります。円の世界で考えているので、あげたりもらったりするということが物凄く負担なんです。こんなのはもらわない方がかえって世話が無くていいというほどです。そういう負担をみんなが感じながら、人付き合いしなければならないし、仕方ないと思っています。
ところが地域通貨が入ると簡単です。その時に地域通貨で何点ということで処理できてしまいます。こういうものを付けています。いろいろな人のサインがされています。これは自分がどういうつながりを持ったかの記録でもあります。人とのつながりのスタンプラリーだと言っている人もいます。今まで知らなかった人が、誰それの知り合いのまた知り合いのというふうにつながったり、あるいは誰かのリクエストに出来ますと言って、そこからつながりが出来ます。人のつながりがどんどん出てきます。人間のいい面が出るんです。原始的だけれどもこういう通帳方式でやった場合、通帳はスタンプラリーです。自分は何人の人間と付き合ったのかが全部その記録に残る、素晴らしい思い出が残るような取引システムなんです。負担はポイントのレベルで解決されます。マイナスがたまっても利息が付きませんからいつか返せばいいんです。なるべくたくさんの人数でやって貸し借りをどこで精算してもいいという仕組みで物のやりとりが出来ていけば、それが円だけで生活しているところに新しく加われば、かなり地域の生活が変わってきます。雰囲気も明るくなってきます。
暮らしの安全ネットと最初に言いましたけれども、そういうことなんです。最後に頼れるのは遠くの親戚より近くの他人といいますね。あれです。日本人は地域通貨の考え方を昔から知っています。お金は天下の回りものといいます。お金が敵で生きていながら、お金は天下の回りもので、強欲でお金ばかりをためた人に言います。そんなにお金をためてお墓の中まで持っていくのかと。何も持たずに裸で生まれてきたんだから死ぬ時は裸で死んでいく方が幸せです。その方が幸せに老後が送れます。なまじお金など持っていると大変です。ある医者が言っていました。うちのおじいちゃんが具合が悪いので何とか助けてほしい、死なれると困るというので、どうして困るのか尋ねると年金が入ってこなくなるからと答えたそうです。子供たちはおじいちゃんを大切にして医者に命を助けてくれと言ったのではなく、おじいちゃんが生きている限りもらえる年金にしか関心がなかったのです。寂しいことです。
ところで地域でつながった人たちを頼りに出来る部分は多いです。100%ではなくても50%ぐらい頼りになれば、地域は非常によくなります。円だけならみんなの表情が悪くなります。東京などはそうです。みんながつんけんした顔をしています。だから地域通貨をやると美人になると私は言っているんです。そんなところでよろしいでしょうか。
ウラシマ:では5分ほど休憩をします。世界経済の話も出てきましたが今聞き足りなかったこと、地域通貨について具体的にもうちょっと聞きたいことがありましたら、質問してください。この後、15分から30分ぐらいかけて質疑応答をしていきます。森野:その中で地域通貨について話し足りなかったことは話します。ウラシマ:実際にカードをお持ちになってほかの地域でされている実物も見ていただきたいと思います。森野:そうですね。もしよろしければ、これは見ていただいても構いません。ただこれは私の大切な通帳です。財産ですので普通は財布に入れておくようなものです。
ウラシマ:地域通貨連絡会として会費を全く取っていません。今回講師をお呼びするに当たって多少実費がかかります。お気持ちだけでいいですのでカンパのかごを回します。講演が面白くなかったという方は入れなくても結構です。よろしくお願いします。森野:それからこれも(「地域支え合いのきっかけづくり・地域通貨」)。これは差し上げるわけにはいかないんですが、愛媛県の保険福祉部というところが刊行しました。今、日本でどういうところでやっているのかが出ています。もしよろしければ、順番に御覧になってください。ウラシマ:入り口の方に「エンデの遺言」がありますのでどうぞ。−−休憩−−ウラシマ:もうざっくばらんにどんどんいきたいと思います。森野:先ほどの私の大切な通帳が……。ウラシマ:それを持って帰っても使えませんから。森野:この通帳は人間に結び付いていますので。先ほど詳しく説明していなかったんですが地域通貨には大きく分けて2つ方式があります。実際にお金というかお札を出すタイプ、それから今お見せしたような通帳方式でやるタイプです。本当はお札を出すタイプの方がやりやすいんです。それにお金の持っている匿名性もお札の方が強いです。ビデオで出てきたイサカアワーはお札です。どこかでイサカアワーを拾っても使えます。通帳方式ならそういう点は面倒ですが、プラスの面もあります。通帳方式の方が人のつながりがより強くなります。だから普通のお金では売らないようなものも結構売り買いされるようになります。私の知っている芸術家でこういう感想を寄せる人もいました。いくら高い値段でも自分の作品で売りたくないものは売りたくない。買いたいという業者は、所詮金もうけのために俺のところに作品を買いに来る。それは嫌だ。ところが交換リングで実際に付き合ってみて、この人ならこちらの方が買ってもらいたいと思い、実際に売り買いしてみたら本当に感激した。
通帳方式は1つのクラブでバーター、物々交換をやり合う輪を作るというものです。これは1970年代からアメリカでバータークラブという形で行なわれていました。日本で通帳方式がやりやすいのは、まだ政府の姿勢、態度が決まっていないためです。日本の法律は明治時代に出来ました。お金の法律がありますので、お金を下々が勝手に作るのはけしからんといわれる可能性もあります。政府は今、日本でどうなっているかを調べているようです。フランスやイギリスでは、政府が積極的に地域通貨を支援するという動きにもうなっています。日本でも過疎の地域は大変ですが、イギリスはもっとひどいんです。地域では行政が仕事を発注しているだけで、収入はそれにしか頼れない、失業率が5割ぐらいになったという本当にひどいところもあります。そういうところで助け合いのシステムとして地域通貨の取り組みが行われています。イギリス政府から見ても、そういう取り組みがある方が助かります。失業者を救済するために乏しい財政からもっとお金を出すということだけが解決方法ではありません。そういう住民たちの積極的な取り組みを政府も支援します。お上が何か与えてくれる、何かしてれるのを待つという今までのやり方ではなく、自分たちのイニシアチブでやる、そして行政がその意義を認めて側面的に支援するというような取り組みが各国で起こっています。
日本でも積極的に推進したいというお役人は多いのですが、そういう人ばかりではありません。やはりお金は国の専権である、国だけが持つ権利を犯すとは何ごとかという人もいます。1930年代に各国で禁止されましたが、日本でもそういうルールになったのは、明治維新以降のたかだか100年がぐらいです。西郷隆盛が西南戦争で負けて彼が出したお札、西郷札が弾圧されて現在の仕組みが出来ました。江戸時代にはどこの藩もお金を出していました。藩札です。幕府が出すお金以外にたくさんありました。藩札は藩だけで使います。地域通貨です。そういうものが出来ればいいんです。日本も地域の自立性が高まって分権型の経済社会になっていかなければならないとよく指摘されます。そういう意味で地域通貨は流れに沿った動きだと考えていいと思います。中央の強い力や権限が必要だと考える人は、これはちょっとねというでしょう。しかしこれからは地方分権で各地域が自立して強い地域経済社会を築いていくことで、全体としての日本の国の力もついてくるんだと考える人もいます。アメリカの連邦準備銀行がイサカアワーを調べてそれを認めたのも、やはり地域経済がしっかりしないと全国経済全体がしっかりしない、だから地域を活性化しているイサカの地域だけで使われているお金はアメリカ全体にも利益になるという結論に達したからです。アメリカ各地でイサカアワーのスタイルの取り組みが生まれています。日本でもそれをやりたいというところがあります。イサカアワーのスターターキットを40ドルで売っています。これを読むと全部すぐ出来るようになっています。すぐにこれを買うことが出来ますが、これを日本で利用することが出来るかどうかは、まだ政府の見解が出ていません。ですから別のスタイル、交換リングのような通帳を使ってやる方式ならお金を刷らないので問題ないでしょう。
それからもう1つ、物で担保した紙の券を出して地域通貨にする方法があります。これは普通使われている証券です。切符です。あるところで、地下鉄の活性化を相談されました。地域の住民の要求で新たに地下鉄の路線をひきたい。地方債を発行するなら地域の住民に買ってもらえばどうか。債券市場で売り買いできる債券ではないから、地域の人に買ってもらって利息を付けよう。利息分は将来できる地下鉄の切符の回数券で払えばいい。沿線住民がいろいろな地域通貨の輪を作って、その中で地下鉄の回数券も地域通貨として使えばいい、と。
日本の円では何でも買えます。鉄道の駅に行って、何でも買える円で切符を買います。円は何でも買える切符のようなものです。それを鉄道に乗るというサービスしか買えない切符に変えているわけです。そういう仕組みです。
東京で始まったものでもう1つ、手形のようなものを地域通貨にするという仕組みがあります。それは発行団体が発行するんですが、もらった人は使う時に自分の名前を書きます。私はこの手形を使って取引をする仲間を信用しているということの証しとして署名をします。裏に名前を書くようになっています。全部書き終わって本部に持っていくと新しいものを出してくれます。要するに取引の仲立ちになればいいので、お金ではない紙の券を出す場合、みんなが信用しなければならないので裏書して使おうというアイディアです。いろいろな活用方法があります。裏書して使うと、使えば使うほど値打ちを増やすことが出来る方法もあります。私が何かを売って100円をもらうと、自分が名前を書いて使う時に110円として使えるというような仕組みでやることも出来ます。その増えていった分はどうするか、発行主体がマイナスになります。発行主体は全体でもあります。だから誰も損をしていないというやり方です。個人が手形を切ってそれを使うという方法もあります。その場所の条件に合わせてやれるという方法です。
あとは実際に物を担保するやり方です。イサカアワーを始めたポール・グローバーという人が、ある時ラジオでこういう話を聞きました。ある町の食料品店が行政当局か何かに移転を迫られた。移転をするのに費用がかかる。費用は自分で負担しなければならない。銀行に借りに行ったら断られた。それで店主が自分の店にある食品を担保にした食料品ドルというものを出した。ほかでは使えない。自分の店に持ってきたら食品に換えられる。この食料品ドルというものを出して一銭もかけずに、めでたく店を移転させた。銀行からお金を借りたらそのお金も利子も返さなければなりません。ところが自分の店の商品を担保にしているので返さなくていいんです。信用の基礎は店に並んでいる在庫の食料品です。ポール・グローバーはそれを聞いて、面白い、イサカでもやれないかと考えたんです。
世界ではほかにもいろいろな方式があります。食券を使うものもあります。ブラジルの21世紀の先進都市、クリチバ市の話です。クリチバ市は世界の最先端の都市設計がされている町です。環境都市といわれ、ごみは全部徹底的にリサイクルします。そのリサイクルのシステムでは地域通貨を使っているんですが、その地域通貨は環境都市にある企業が発行する自分の会社の食堂の食券なんです。その会社は資源ごみを買う時に食券で買います。食券をもらってもすぐに全員が食堂に来るわけではありません。食券はその会社の信用で、違うところで使われます。町の人にとってはごみがごみではありません。徹底的にごみの分別をして資源ごみを集めてそれを企業に売ります。企業もそれを引き受けて食券を払います。企業は環境問題に積極的だといわれ評判がよくなります。ごみを集めた人は食券がもらえて生活の足しになります。クリチバ市はごみの処理にかかる費用が減ります。誰も損をしないシステムなんです。
実は地域通貨はアメリカでウィン・ウィン・ワールドといわれています。ウィンというのは勝つという意味です。勝つ勝つシステムです。普通なら勝つ人もいれば負ける人もいます。ところがウィン・ウィンで、誰も損をしません。みんなが得をします。それは今のクリチバの話ではっきりします。もし地域通貨のシステムがなければ、行政は莫大なごみ処理費用を負担しなければなりません。そのシステムでは住民はごみを集めて企業に買ってもらうと生活の足しになるし、教育機関などもそれに取り組んでいます。ブラジルには非常に貧しいスラムもありますが、そういうところの貧しい学校もサッカーボールが欲しいんです。じゃあこれは空き缶何個分だといってみんなで集めます。それを企業が買ってくれます。もらった食券を使ってサッカーボールを買うんです。それまで住民が払った税金を使ってごみを処理していたのに、その費用がほとんど浮いてしまいます。行政も住民も企業も得をします。そして結果的にクリチバ市は非常にきれいな町並みだということです。
基本的にいうと地域通貨というものは手段、手法です。どの問題を解決するかという目的は住民たち自身が決めるものです。地域通貨を実現するのが目的ではありません。もっといい違う方法があれば、それをやればいいだけです。単なる手段です。環境問題、地域づくり、町おこしなどの各分野で、地域通貨を手段、手法として使えないかという試みが始まっています。どの地域でも問題となっていることがあるはずです。それを解決するために地域通貨の発想でやれないかと考えてみることが大切です。世界のいろいろなところには、自分の地域と似たような地域があります。そこでは地域通貨が行なわれているかもしれません。もしそうなら見てみた方がいいですね。日本でも環境、ごみ問題などが大きな問題になっています。クリチバ市の例などはとても参考になりますが、まだまだ知られていません。
クリチバ市は地域通貨を入れる前にもそういう取組みをしていましたが、地域通貨を入れてから急速に進んだそうです。その時、行政は何もしていません。行政は大きな環境都市という目的を与えて、環境問題に取り組んだ企業などを毎年、褒めているんです。今の社会で1番足りないのは褒めるシステムです。地域通貨は負ける人のいないウィン・ウィンのシステムであると同時に褒めるシステムです。今の社会ではお金をもうけた、勝ったものだけが褒められます。しかも勝った金額でしか褒められません。ところが地域通貨ならお互いに褒め合います。私が入っている千葉のグループは、ピーナッツという通貨の単位を使っています。ここにはピーナッツ勲章があります。例えばたくさんプラスをためて近所のお年寄りの世話をする人に使ってくれと寄付をしてくれた人には勲章を上げます。ピーナッツ勲章です。通貨ではかるし顕彰します。
今の社会は人を褒めたり顕彰することが少ないんです。そこで地域通貨の中でアイディアがいろいろ出ています。日本では行政が勝手に決めた住所の表示を使っていますが、フランスのパリでは道路には全部人の名前が付いています。日本でも自分たちがこの人を褒めたい時、行政の決めた住所以外に何のたろべえ通りなどと名前を付けて、みんなでそう呼ぶようにすることを私は提案しています。これはうれしいですよ。道路が全部なくなれば、電信柱に名前を付けましょう。
こういうこともあります。つい最近、愛媛で伊予柑の生産が増えて価格が暴落し、畑で腐らせざるをえなくなった。これを何とか出来ないでしょうか、と。さっきビデオで見ましたが、イサカにはサポートシステムがあります。これは先買いシステムです。毎年、作付けの時期になると農家が集まって、うちの農場では今年はこういうものをこうやって作るという説明会を開きます。そこに町の人が来て、あそこの農場ではそういう計画を立てているのか、非常にいい、ぜひ支援したいということで、秋になって作物が出来た時に買うためにそれを先買いします。それをドルで払う人もいれば、イサカアワーで払う人もいます。伊予柑だって同じような仕組みが考えられるはずです。都会の人に先買いしてもらえばいい。そうすればマーケットばかりをあてにしている農業から少しは脱皮できるでしょう。さらに地域通貨の手法まで入れれば、都会の人と農村の人が交流することも出来ます。このようにいろいろなアイディアがあるんです。
ウラシマ:すみません。質問を少し入れたいんですが。
森野:はい。
ウラシマ:本当に初歩的なことでもいいんですが、何か質問したいことがありますか。今ビデオを見てお話を聞いたばかりという人は、話だけでは分からないので何でも質問してください。はい、どうぞ。
質問者:大泉村の◯◯と申します。私も地域通貨のことは余り勉強していないんですけれども、提案したいことが1つあります。それは金野さんにお話ししてあるんですが、あるいは先生はお聞きになっていらっしゃるかもしれません。先生、地域通貨には2つあって、1つはマネー、もう1つは記帳あるいは交換ですね。ところが物々交換とか交換リングとかいうのは、あくまで趣味、サークルを広げるという趣旨であればいいんですが、地域の活性化とかいうところには程遠いです。やはりイサカアワーのようにマネーでなきゃ、物が買えなきゃだめだと思うんです。ところが日本の場合はイサカアワーのように物が買えるお金ということになると、まず保守的な日銀は向き合わない。恐らく1番難しい。そこで2つの欠点といいますかデメリットの中間を取りまして、介護保険のサービスと結び付けて考えたんです。
この地域で介護保険で認定されない方がたくさんあると思います。1人暮らしの人もどんどん増えていきます。そうするとヘルパーさんを依頼します。ヘルパーさんの労働力というのは地元の農家の奥様方が結構いてやってくださるとかで、これを活用するといい。例えば1時間700円ということでお願いする。ヘルパーさんの斡旋は地元の商工会がやったらいいと思うんです。商工会がそういうヘルパーさんを斡旋する。そして利用した人はその対価を商工会に払う。商工会はヘルパーさんに現金ではなくて地域マネーで払う。その地域マネーの形は、北巨摩のこまをとってコママネーと私は言いたいです。1コマ=1円。それでコママネーは商店会の加盟店であればどこでも何でも買えるということになりますと、現金で受け取らなくてもコママネーで受け取った人はほとんど現金と同じようにに使えるわけです。
それで加盟店で物を買って売り上げになった場合に加盟店はいろいろな経費がかかりますから、その経費を負担してもらう。それは例えば売り上げの3%になるか2%になるか分かりませんけれども、大した費用ではない。それだけディスカウントにはなりますけれども、地域で買ってくれるということになります。この辺ですと韮崎とか甲府に行って買う人も多いです。それが大泉の地元の商工会で買ったらそれだけで売り上げが増えます。そうするとヘルパーさんは将来非常に増えてくるわけです。相当な数になるんです。地域の活性化につなぐということがある、そういう提案をしています。
森野:そういう仕組みは、もうやっているところがあります。鳥取で始まった、あいのわ銀行といいましたか、似たシステムのようです。行政が最初3,000万円ぐらいの資金を出して、介護サービスを受ける人と提供する人に点数で時間預託制でやっているそうです。そこでは1時間が1点なんですが、希望者は例えば600円という日本円に換えることも出来ます。もちろん自分がやった1点を取っておいて、今度使うことも出来ます。あいのわ銀行の場合は中学生以上の人は全部基礎会員で、サービスを受ける人は利用会員です。サービスが必要な高齢者は最初に1,000点をもらって、それでサービスを受けます。それを使い切ったら今度は1時間600円でサービスを買います。サービスを提供した人は点数をもらいます。必要であれば円にも換えられる仕組みです。それを商店街で使う方法に出来ないかというのは、今私が言っていることなんです。商店街にはスタンプ会のような組織があります。いわば商店から見た割引分を地域通貨として使ってもらい商店街の活性化が出来ないでしょうか。その割引スタンプと時間預託制の点数をリンクしてサービスを受けてもいいし、商店街で使ってもいいんです。商工会が中心になってそれを運営すると今おっしゃいましたが、多くの地域で商工会や商店街が社会福祉協議会のように、そういうシステムを運営するということが考えられます。
質問者:それで今申し上げたマネーではなくて介護保険の商品券のようなものを発行して、それが地域マネーとして流通する、商品券といっても名前はコママネーといいますが、そういうことについて日銀は何か言っていますか。
森野:どういう判断を下すかというのは日銀というか大蔵省の問題ですが、そういう一種の証券タイプのものを流通させるということについては、やはりあまり問題はないと考えています。注意すべきは、業として営業する商店や事業者などからみると、地域通貨の部分はあくまで割引ということで、代価性がないような運営にしておくと消費税で問題にされることはなくなると考えられます。
質問者:百貨店が商品券、回数券を出すことについては当局は何も言えないわけですね。
森野:そうです。基本的に、介護保険の商品券というのはサービスが担保です。デパートの出している商品券というのはデパートで売っている物が担保です。そういう意味ではこれは同じ性格を持っていて、証券あるいは物やサービスで担保されているチケットだともいえますので、何とかクリア出来るのではないかと思います。滋賀県では地域通貨で紙の形のお金を出しています。おうみというお金です。行政が作った箱物、会館の利用券が担保です。会館を利用する地域の人たちが、おうみという利用券をお金として使います。
質問者:買い物が出来ないと、おうみでも結局は余ってしまうのではありませんか。
森野:そうですね。買い物は徐々に広まっています。例えばタクシー会社がタクシー料金の支払いの一部におうみを受け入れ、タクシー会社に集まったおうみを運営団体に寄付します。自分たちは地域のために役に立っている、地域のタクシーを必要とする高齢者や障害者を支援するようなことをしているんだということです。ところで、やはり問題なのは商店でやった場合、税金の問題があります。原理的に物々交換なら税金を負担しなくていい、消費税を払わなくていいという人もいますが、これは間違いです。税金は負担しなければなりません。ところが私たちが千葉でやった時の話です。最初は円と地域通貨のピーナッツを複数通貨立てで書いていました。そして両方を足して消費税を計算するようにしたら、それでは地域通貨のピーナッツを円と同格に扱うものだからだめだとうひとがでてきました。それで地域通貨の分は除いてそれ以外の金額で5%の消費税を計算する、地域通貨立ての部分はバーターだから消費税の計算対象から除くようにしました。
質問者:物を買う時は当然消費税を払うものですから、それは問題になりません。森野:要するに、税を負担する方式についてまだ課税当局の見解が決まってないということなんです。昨年、どうしたらいいのかいろいろ相談したんですが、課税当局も判断できない、実際に事実として出てきたら判断するだろうということでした。商店街でやっているところでは税の問題が起こらないように、円建ての取引分を全部はずしています。そういう微妙な状況です。今年に入ってから政府もいろいろ調べ始めているようですが、ちょうど選挙になりますし大分テンポが落ちているようです。その間に実際はどんどん進んでいます。質問者:時間がもうないんですが、例えばこの高根町の商工会で介護保険に結び付けて、実質上商品券であるコママネーを起こして加盟店で物を買えるようにする……。
森野:それは可能です。
質問者:維持費を商工会で出し、そういう仕組みのコママネーというものを例えば商標登録すれば可能性はありますか。
森野:あります。
質問者:高根町の商工会の方がもしいらっしゃれば、大泉も一緒ですから、ぜひ商工会で取り上げていただいてコママネーを商標登録していただければ、全国的に有名になると思います。
森野:その仕組み自体はいろいろなところでもう行われ始めていますので、いわゆる今話題のビジネス特許にはならないと思いますが、その方式で商工会自体ももうかります。これから大きくなるNPO市場に参入しようとする取り組みは多いです。NPO団体、非営利法人は社会的に有意義なことをするんですが、配当を出さなければいい、幾らもうけてもいいんです。そのNPO団体と地域通貨を扱う団体が提携して、円と地域通貨、両方の流れをうまく処理するという仕組みが今考えられています。実はそれをしていかないと地域通貨をやった意味がありません。少人数で始めているのは始まりのほんの1歩なんです。商店街を振興することで地域を振興していくようなノウハウがたくさんありますので、大いにやれる可能性はあります。
質問者:ありがとうございました。
ウラシマ:どうもありがとうございました。実際に地域通貨の話し合いがもう始まっていまして、高根町では金野さんのところで16日にもうスタートします。20〜30人規模で始められます。それが回り出したら加入条件として最低2人の紹介が要るなど、いろいろありますから具体的な取り決めは金野さんのところでお願いします。私も長坂町で立ち上げる予定でいます。皆さん、長時間にわたってどうもありがとうございました。
参考資料
『エンデの遺言』:NHK出版雑誌「自由経済研究」:ゲゼル研究会刊発売元
ぱる出版
〒160−0011
東京都新宿区若葉1−9−16
TEL 03-3353-2835
FAX 03-3353-2826