曽我 純:
ゼロ金利の恩恵を最もうけるのは金融部門である。3月の米消費者物価指数(食品・エネルギーを除く)は前年比1.1%に低下し、60年代以降では最低の伸びである。銀行間市場での調達コストは0.2%程度であるので、実質金利はマイナスになる。市場で運用すれば儲かるので、金融機関はできるだけ多くの資金を調達し、積極的に運用に取り組み、金融市場だけが活発になる。超金融緩和が実体経済に波及しているかというと、貸出は前年を割れているし、株高以外にはあらわれていない。ゼロ金利による金融部門の利益拡大が株高に結びついている。週末のNYダウは前年を40%以上も上回っており、バブル化しているといえる。月末値で40%以上の上昇は過去30年間で6回にすぎない。米国経済はバブルが弾けたと思ったら、またバブルが発生するという悪循環に陥っている。
非金融セクターの利益も回復しているが、賃金などの報酬の抑制による部分が大きく、米国企業の収益力が本格的に回復しているとは言いがたい。09年10-12月期の雇用コスト指数(非軍事、総報酬)は前年比1.5%と7-9月期と同じ低い伸びとなり、1981年以降では最低である。09年10-12月期の小売売上高は前年比2.0%と雇用コスト指数をわずかに上回ったが、今年1-3月期の小売売上高は7.6%も伸びており、雇用コストが抑えられたままであれば、収益は大幅に改善しているはずだ。
製造業の収益源である輸出増止る
米国の株価が続伸している一方、日経平均株価は2週連続の下落だ。債券利回りも6週間ぶりの低い水準に低下し、円ドル相場は円安ドル高にふれた。株価の上昇力が衰えてきたのは、1-3月期で企業収益の改善が止る兆しが見えてきたからである。22日発表の3月の貿易統計によると、季節調整値の輸出は前月比横ばいとなり、1月を2ヵ月連続で下回った。輸出の回復が止ることは、製造業の売上の増加も止り、収益増も期待できなくなることになる。輸出の動向から予想すれば、月次の製造業の業績は2月以降足踏みとなっているが、1-3月期では前期比11.7%も増加しているため、利益も大幅に伸びているだろう。3月の輸出はピーク(08年1月)の76.3%の水準であり、この水準から大きく伸びることはないのではないか。
輸出の前年比伸び率は3月、43.5%増だが、前月よりも1.8ポイント低下した。前月より伸び率が拡大したのは欧州だけで、米国は29.5%と20.9ポイントも低下し、アジアは52.9%と依然高いが2ヵ月連続の低下である。
08年10月以降、世界的な需要の急激な減少により、在庫は大幅に増加した。在庫の急増に対処するために生産を縮小し、在庫処分に走った。その結果、在庫は適正水準に以下に減少したため、在庫を適正水準に戻すための生産増とそれにともなう輸入の拡大が生じたが、それも一巡したところではないか。
3月の米小売売上高(飲食業除く)は、ピーク(07年11月)を5.5%下回っている。ゼロ金利政策や7,870億ドルの財政政策を出動しても、これだけの回復にとどまっており、今後、こうした政策効果が薄れていくことを考慮するならば、回復の足取りはより緩慢になるだろう。欧州はEUの経済状態の格差が単一の金融政策では運営できない状態に追い込まれており、景気回復は米国よりもさらに遅いペースになることは間違いない。新興国はそれなりの成長を持続するが、米国、欧州の経済が横ばいになれば、生産水準を落とさざるを得ない。世界的に生産は過去1年のような、在庫を積み増すような急激な回復ではなく、需要に見合った水準を模索しながら慎重に進めていくように思う。
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